Google Workspaceを使った授業の準備・実践・振り返り【前編】/昭和学院中学校・高等学校 教諭(理科・情報)博士(工学) 榎本裕介

公開日:2021/07/15
最終更新日:2022/06/27

 

【連載】榎本裕介の “教育×Google Workspace” 最前線

Google Workspaceを教育現場の最前線で活用されている昭和学院中学校・高等学校 教諭(理科・情報)博士(工学)榎本裕介先生にお話を伺いました。
現場の先生方がかかえる、ICT活用についてのいろんな悩みに回答いただきます!

 

概要

GIGAスクール構想によって端末が配布され「Google Workspaceを導入したものの実際に授業でどう使ってよいかわからない」というお悩みの先生方のために、一連の授業運営の流れをご紹介します。
各メディアで華々しく紹介されるICT活用事例の授業を日々行うには、多大な労力をかけての準備が必要であり、全国の先生方が本当に知りたいのは日常の授業運営方法だと思われます。
10年間にわたってGoogle Workspace(かつてはGoogle Apps for Education その後 G Suite for Education)を用いて授業実践をしてきた経験からたどり着いた、高効率な授業運営方法を紹介します。
Googleのサービスは非常に優れたUIを持っていますので、「こんなことがしたいな」という考えだけ持っておけば操作方法で迷うことは少ないです。しかし、いざ授業で使うとなると、細かい設定一つひとつについて問題がないか迷ってしまいます。その迷いを解消するための一例の紹介として、実際に操作しながらお読みください。

年度の始めにやること、複数クラスを担当しているときに最初のクラスでだけやること、全ての授業でやること、学期の終わりにやること、学年の終わりにやることといった順に紹介していきます。


※教員と生徒全員がGoogle Workspaceアカウントを所持していて、Googleドライブが使えることを前提としています。
※教員はWindowsOS、MacOS、ChromeOSで授業準備をすることを想定しています。
※紹介する操作画面は記事執筆当時のものです。

年度の始めにやること

初回授業の前にGoogle Classroomを作成する

まずは自分が担当する授業の種類の分だけGoogle Classroomを作成します。Google Classroomにログインして、右上の「+」から「クラスを作成」します。このとき「クラス名(必須)」は「科目名+年度+クラス名」とすることをおススメします。
1文字目がアイコンに表示される仕様なので、多くの科目のClassroomを行き来する生徒への配慮です。また、教員は毎年同じ科目を担当することが多くなりますので、クラス名だけでなく年度を記載しておくと、自分自身の過去の授業実践を参照しやすくなります。

同じ学年の授業を複数の先生で担当されている場合は、その先生同士でお互いにClassroomの「教師」として参加することができます。そうすることで細かい打ち合わせを日々行わなくても別のクラスでどのような取り組みをしているのかが可視化でき、教材の共有もスムーズにできます。

初回授業で生徒にClassroomに参加させる

初回の授業では生徒たちにその授業のClassroomに参加してもらいます。作成したClassroomのトップ画面に「クラスコード」が表示されており、ここをクリックすると拡大表示されますので、これをプロジェクタで表示させるか、黒板に書いておくだけです。
生徒の操作は心配しなくても大丈夫です。少なくとも中学1年生以上であれば学力問わず直感的に自力で操作できます。
生徒が自分で画面の文字を読んでツールを使いこなすという基礎的なICTリテラシーを身に付けるためにも、手順書を作らずに「このクラスコードでクラスに参加して」という指示だけをしてみてください。

参加できた生徒は「メンバー」タブで確認できますが、「出席番号」の機能はありません。
成績処理の際には生徒が出席番号順に並んだ状態であってほしいものです。そのためには生徒の姓の前に学年、組、番号を追記するという方法が有効です(1年2組3番 榎本→10203榎本)。
Google Workspace管理者が毎年一括で姓を変更するか、生徒に「自分でアカウントの名前を変更しなさい」という指示でも実現可能です。

複数クラスを担当しているときに最初のクラスでだけやること

授業の構成は教科によって、教師によって様々だと思いますが、ここでは15分間程度の教師からの説明、30分間程度の問題演習、最後に振り返りを5分間と想定します。
ICT機器が無い時代には、教師の持つ体系化された知識を生徒に伝えるには板書が最良の方法でした。プリント教材より優れる点は、黒板に書く過程を見せられることです。これはICTを活用した授業でも変わりません。知識が体系化できている教師が、その考える過程、まとめる過程を見せることで、生徒は理解を促進されます。教科書に載っている知識を教えるのではなく、教科書に載っている知識をどう体系化するかを見せるのが教師の役目と考えます。重要な語や模式図をゼロから黒板に描くにはそれなりの時間がかかります。それを短縮し、授業中に生徒に何を考え何をノートに書いてほしいのかを精選すれば、教師が生徒に話をする時間は長くても15分あれば十分でしょう。

さて、そのような前提のうえで、授業の準備を3つに分けて紹介します。

 1.説明資料

 2.演習

 3.振り返り

説明資料

ここでは、授業の資料をPDFファイルとして作成したとして、その公開手順を説明します。この資料は紙資料として配布してそこに書き込ませたり、手書き対応アプリを用いて端末内で書き込ませたりといった資料です。紙で配布するものであっても、Classroom上で生徒に共有しておくと教員の仕事の削減になります。なぜなら「プリントをなくしてしまいました。もう一枚ください。」と言ってくる生徒がいなくなるからです。各家庭でプリンタがあることが多く、仮に持っていなくてもPDFファイルを印刷するにはコンビニさえあれば可能です。

手順としては、Classroomの「授業」タブで「作成」→「資料」として投稿を作成します。
配布したいPDFファイルを「追加」から指定し、適切なタイトルを入力します。「トピック」にて授業の説明資料であることがわかるようにトピックを付けます。最後に、右上の「投稿」ボタンの横の▽から状況に応じた投稿をします。たとえば教師自身の空き時間に授業準備が終わり、その場で投稿すると生徒にとっては他教科の授業中かもしれません。そのような場合は「予定を設定」を選択し、生徒に通知が表示されても影響が少ない時間帯を選んでください。演出として当該授業が始まるときまで伏せておく必要がある資料であれば、授業予定日の適切な時間に「予定を設定」とするか、「下書きを保存」としておいて授業の場で投稿するとよいでしょう。

演習

次は演習の準備です。授業では何らかの形で生徒が自分の考えをアウトプットする機会が重要です。学ぶことに貪欲で前向きな生徒はただ教師が話すだけで能動的に考えを巡らせ、ノートに自分の考えを書くことができるかもしれません。しかし、多くの生徒たちはその姿勢が身についておらず、何らかの仕掛けが必要です。
授業という生徒全員が決められた時間の中で取り組む演習では、すぐ解ける簡単なものより、難易度の高いものが有効だと考えられます。同じ授業を受けている生徒同士で協力することで、互いに異なる表現で授業の内容を表現し、刺激し合う状況が生まれます。
これは独学では経験できない効率的な学びであり、学校という場で授業を受ける最大のメリットともいえます。

ここでは選択肢形式で回答する演習を想定します。
演習問題はPDFで共有しても紙で配布しても良いでしょう。ただし、説明資料と同様に紙で配布する場合でもPDFを共有しておくことを強くおススメします。勉強熱心な生徒が復習するため、プリント管理が苦手な生徒が見つけられるようにするためです。

準備した演習問題PDFをまずGoogleドライブに入れます。
Googleドライブ上でPDFファイルを右クリックし、「リンクを取得」を選択します。「制限付き」となっている設定を所属する組織の名称に変更します。そのうえで「リンクをコピー」します。Classroomの「授業」タブから「作成」→「テスト付きの課題」をつくります。「課題の詳細」の欄に先ほどの演習問題PDFのリンクを貼りつけます。このとき、「追加」として課題に添付するファイルとしてPDFを入れてしまうと、Google ClassroomとGoogle フォームの連携が解除されてしまいます。課題に添付してあるのがフォーム一つだけのときにのみ、フォームからの得点のインポートなどの連携が可能となります。その他、課題のタイトルや、授業を準備する段階で提出期限の日時を決めておきましょう。

次に「Blank Quiz」と表示されているGoogleフォームをクリックし、フォームを編集します。
選択式の問題だけであれば、「選択式(グリッド)」が便利です。こちらのGoogleフォームには問題文の編集などをせず、あくまでマークシートの代わりのような扱いにしておくと、準備の手間が最小限に抑えられます。
選択肢を作成したら「解答集を作成」として正解選択肢と点数を指定します。点数の指定はClassroom上とGoogleフォーム上の2か所がありますが、Googleフォームにて点数を指定すれば、自動的にClassroom上でもその点数を最大値として点数がインポートされます。
右上の歯車マークから設定を開くと色々な設定ができますが、Classroom上で「テスト付きの課題」として投稿したタイミングで自動的に「メールアドレスを収集する」「回答を1回に制限する」がONになって演習に使いやすい設定が適用されるので特に操作しなくても構いません。
フォームの編集が終わったらフォームを閉じ、Classroomの投稿は説明資料と同様に「予定を設定」または「下書きを保存」しておきます。トピックも「演習」「課題」といった名前を付けておきましょう。下書きの保存は自動でも行われるので、左上の×で閉じても大丈夫です。

振り返り

準備の3点目は授業の振り返りの準備です。
1コマの授業を終えた段階で、「わかったつもり」になっていて実は授業内容を理解できていないということがよく起こります。理想としては、分からないことがあったら生徒がすぐに質問をし、全員で全ての授業内容を理解する授業をやりたいものです。しかし、一部の生徒は質問をためらったり、勘違いしていたり、教師の期待する理解を生徒は実現できないまま授業を終えます。ここではそんなすれ違いの解消のための授業終わりの振り返りの準備をします。

まず、演習と同様に「授業」タブから「テスト付きの課題」を選択します。質問はひとつだけ「今日の授業で学んだこと・疑問に残ったことを簡潔にまとめよう」として回答形式を「段落」にしましょう。「解答集を作成」から得点を設定します。毎授業でこの振り返りを実施し、評価材料としても使えるものにします。これも説明資料や演習と同様にトピックを付け、「予定を設定」または「下書き保存」しておいてください。



今回の【前編】では、Google Workspaceを利用した授業運営のうち、
 ・年度の初めにやること
 ・複数クラスを担当しているときに最初のクラスでだけやること
について説明いたしました。
次回の【後編】では
 ・全ての授業でやること
 ・学期の終わりにやること
 ・学年の終わりにやること
について説明させて頂きます。

三谷商事にご相談ください

本コラムの内容にご興味がありましたら、教育現場での実績が豊富な三谷商事にご相談ください。

 
 

Back Number

管理対象Apple IDと確認コード② ~電話番号のリセット・追加・削除方法

管理対象Apple IDと確認コード② ~電話番号のリセット・追加・削除方法

管理者やマネージャ、講師、職員といった生徒以外の役割の管理対象Apple IDでは、確認コードによる追加の認証が必須となっています。 これらの役割のアカウントでは、確認コードはあらかじめ設定した電話番号宛に送られてきますが、

管理対象Apple IDと確認コード① ~役割による発行方法の違いなど

管理対象Apple IDと確認コード① ~役割による発行方法の違いなど

本コラムでは、管理対象Apple IDと確認コードについて解説していきます。 確認コードとは? まずはじめに、「確認コード」とは何かというと、管理対象Apple IDのパスワードとは別に生成される6桁の動的な数

【Google Workspace運用術】特定ログの発生時にアラートとして通知させる方法

【Google Workspace運用術】特定ログの発生時にアラートとして通知させる方法

前回のコラムでは、ユーザーがGoogle ドライブ上で行った操作をGoogle管理コンソールのログ画面から確認する方法について取り上げました。 この他にも、Google管理コンソールには、あらかじめ設定した条件に合っ