前回のコラムでは、教学IRとラーニングアナリティクス(LA)の違いについてご紹介しました。
LAについて大学の皆様とお話しする際によくいただく質問の一つに、「教学IRで使用しているBIシステムを用いて学習分析を行えばよいのではないか」というものがあります。
今回はこの疑問に対し、BIシステムとLA専用システムの違いという観点から整理してみたいと思います。
前回コラムでは、教学IRについて
「学長・執行部・マネジメント層が、方針決定や制度改善を目的として活用する分析であり、マクロな視点に基づく中長期的な分析を通じて、トップダウンの意思決定に役立てるもの」
と整理しました。
このような目的を実現するため、多くの大学ではBI(Business Intelligence)システムを活用し、多角的な分析が行われています。
BIシステムには、成績、出席、アンケート、入試、就職などのデータが取り込まれるケースが多く、これらのデータは経営分析のみならず、学習分析に活用することも確かに可能です。
一方、LAについては、
「教員や学生が、個別支援や早期警告を通じて学習の向上を図るために活用する分析であり、ミクロな視点に基づく即時性のある分析を、教育現場からのボトムアップによって教育改善に役立てるもの」
とまとめました。
この目的を達成するためには、大学教育の現場で日常的に利用されているLMS、動画配信システム、電子教科書などの学習・閲覧ログを、成績情報や出席情報と統合して分析することが求められます。
このようなLAの特性を踏まえると、BIシステムが必ずしも得意とはしない点がいくつか考えられます。
膨大なログデータの取り扱い
LAでは、LMSなど複数のシステムから出力される大量のログデータの中から意味のある情報を抽出し、粒度を揃えるなどの整形・加工を行ったうえで、時系列に沿った可視化や分析を行います。
BIシステムは集計処理を得意としますが、学習行動を時系列で追うような分析においては、こうした前工程の処理設計が重要となります。BIツールがあるからといって、学習分析が自動的に実現できるわけではありません。
ライセンス費用の考え方
学習分析では、基本的に対象となるすべての教員や学生が、自身や担当科目に関するデータを閲覧することが想定されます。
これを一般的なBIシステムで実現しようとすると、教員・学生全員分の閲覧ライセンスが必要となり、結果として非常に大きなコストが発生する可能性があります。
BIシステムは、本来、経営層や一部の分析担当者など、利用者が限定されることを前提に設計された製品が多く、大学において数百人から数万人規模の学生が日常的に利用することまでは想定されていません。
このように、
「教育に関するログデータを扱うこと」
「システムの目的に沿って、多くの教員・学生に利用してもらうこと」
を重視する場合、BIシステムと比較してLAシステムが優位となる場面があります。
一方で、BIシステムは多様な分析手法や柔軟なデータ活用に優れているという強みがあります。LAシステムで整理・蓄積したデータをBIシステムに取り込み、より俯瞰的・戦略的な分析を行うことで、教学IRに活かすことも可能です。
用途に応じて適切なシステムを使い分けることが、教育の質の向上につながります。
弊社の学習分析システム「CampusLA」も、その一助となれるよう、今後も取り組んでまいります。