基礎編②~教学IRとLA(ラーニング・アナリティクス)の違いとは?~
連載
公開日:2025/12/22

「教学IR」と「LA(ラーニング・アナリティクス)」は、どちらも学内における様々なデータを収集・活用していくことをさしていますが、その目的や重視する視点には違いがあります。

本コラムでは、それぞれがどのような背景から生まれてきたのかをひも解きながら、両者の違いについてご紹介します。

教学IR(Teaching Institutional Research)

IR(Institutional Research)という考え方は、1950年代頃の米国において、企業や機関に関する情報収集や財務分析を行う手法として発展しました。1960年代に入ると高等教育機関(主に大学)が拡大し、大学運営や教育改善を目的として、学内実態調査にIRの手法が応用されるようになりました。
その後、学内データを体系的に収集・分析する仕組みが整備され、1960年代後半には、米国の大学において制度的なデータ収集が本格化したとされています。
さらに1980年代に入ると、大学評価やランキングを行う機関の発展とともに、教育プログラムの学習効果や学生の学習行動の分析も重視されるようになり、これらも教学IRの対象に含まれるようになりました。

LA (Learning Analytics:ラーニング・アナリティクス)

LAは、学習者一人ひとりに最適化された「学び」を提供することを目的として、教育現場の改善に役立てる分析手法です。その研究自体は以前から行われていましたが、2000年代後半から2010年前後にかけて、欧米を中心に体系化されました。
入門編③でも触れていますが、2010年頃から、「Learning Analytics」という用語は、LMSの普及とともに学術的に用いられるようになりました。2011年にはLAK国際会議が開始され、あわせてSoLARが設立されることで、研究成果の共有や理論枠組み、研究倫理に関する国際的な議論が進みました。これによりLAは、単なる学習ログ分析にとどまらず、学習を理解・改善するための学際的な研究分野として確立していきました。

日本国内での動き

次に、日本国内での動きを見てみましょう。
一般的には、教学IRが制度化・具体化・高度化していく過程において、その手段の一つとしてLAが活用されてきたと捉えられています。

① 萌芽期(2000年代前半):IR概念の紹介段階
少子化が課題となる中、2004年に大学評価・認証評価制度が導入されました。当初は、経営や大学評価の視点が中心でした。

② 形成期(2008年〜2012年頃):教学IRという概念の登場
中央教育審議会において、2008年の「学士課程教育の質保証」では学修成果(アウトカム)重視への転換が示され、2012年の「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」では、学修時間の実質的な増加・確保といった議論が行われました。
ディプロマ・ポリシー*、学修成果の把握、学生の学びの可視化が強調され、教学データを体系的に扱う必要性が明確になりました。

③ 発展期(2013年〜2017年頃):教学IRの制度的定着
教学IRという考え方が広く認知される中、2016年には大学設置基準の改正が行われ、学修成果の把握・評価および教育改善への活用が、より明確に求められるようになりました。

④ 展開期(2018年〜現在):LAとの接続・分化
この時期から、教学IRとLA(ラーニング・アナリティクス)の関係が強く意識されるようになりました。教学IR(大学の意思決定のための「知」)と、LA(学びの現場を変える「技術」)を結び付けて捉えることが、大学評価や教育改善の中核的なテーマとして認識されるようになったためです。

教学IRとLAの特徴

それぞれの特徴は、以下のように整理できます。

〇教学IR
 対象:大学・学部・学科・カリキュラム全体
 視点:組織・制度レベル(マクロ)
 目的:教育の質保証/カリキュラム改善/学修成果の可視化/中退率・進級率・就職率の分析 など
 主なデータ:成績、GPA/履修・進級・卒業データ/学生アンケート/入試・就職データ など

〇LA
 対象:学生個人・授業・学習活動
 視点:学習行動レベル(ミクロ)
 目的:FD*SD*/学習支援・早期介入/授業改善/学修行動の可視化 など
 主なデータ:LMSのログ(閲覧回数、滞在時間)/課題提出状況/小テストの解答履歴/学習アプリの操作履歴 など

まとめ

このような特徴から、
〇教学IRは、学長・執行部・マネジメント層が、方針決定や制度改善を目的として活用する分析であり、マクロ的な視点に基づく中長期的な分析を通じて、トップダウンの意思決定に役立てるものといえます。
〇LAは、教員や学生が、個別支援や早期警告を通じて学習の向上を図るために活用する分析であり、ミクロ的な視点に基づく即時性のある分析を、教育現場からのボトムアップによって教育改善に役立てるものといえます。
両者はそれぞれ独立した概念でありながら、相互に補完し合い、教育の質向上を目指す点では共通しています。
より良い教育環境が広がっていくことを目標に、当社パッケージ「CampusLA」も、その一翼を担える存在へと発展していくことを期待しています。

「*」・・・「基礎編①~今さら聞けない基礎ワードを解説!~」も合わせてご参照ください。