教育現場を変える「学びの見える化」
大学教育において「学生の学びを可視化する」という言葉を耳にする機会が増えてきました。これを本格的に実現する手法として注目されているのが、ラーニング・アナリティクス(Learning Analytics:LA)です。
しかし、「LAとは一体何か?」「どんな価値があるのか?」といった問いに明確に答えられる方は、まだ多くはありません。本コラムでは、LAの基本から、教育現場にもたらす変化、そして大学経営や教学マネジメントにとっての意義まで、わかりやすく解説します。
ラーニング・アナリティクスとは?
ラーニング・アナリティクスとは、「学生の学習行動に関するデータを収集・分析し、その結果をもとに教育改善や学修支援に活用する」ための取り組みです。
主にLMS(学習管理システム)やオンライン教材、テスト、レポート、動画閲覧などの履歴データをもとに、次のような学習状況が可視化されます:
・誰が、どの教材を、どれだけ見ているか
・課題の提出状況や、テストの正答率
・授業時間外の学習量やペース
・到達度や理解度の変化
これらの情報をグラフやスコアで「見える化」することで、学生本人、教員、支援スタッフ、経営層それぞれが、学びの“今”を把握できるようになります。
「学びの見える化」が教育現場を変える理由
かつて、学生の状況を知る手がかりは、テストの点数や出席記録、教員のによる「印象」や「経験」に頼るしかありませんでした。しかし現代では、学生の行動がデジタル上に蓄積されるようになったことで、“プロセスとしての学び”がデータとして扱えるようになりました。
ラーニング・アナリティクスの導入により、次のような変化が現れます:
・学生のつまずきを早期発見できる
→ 提出遅れや閲覧不足の学生を抽出し、個別に声かけや支援が可能
・授業改善のヒントが得られる
→ どの教材が活用されていないか、どの回の理解度が低いかを把握できる
・学部や学科単位で傾向が見える
→ 教育施策やカリキュラム改善の材料に
これらはすべて、データに基づいた“根拠ある改善”を可能にする点で、大学の教学マネジメントにとって極めて重要です。
教育活動を支える「学びのデータ基盤」づくり
LAを活用するためには、LMSやオンライン教材などから得られる学習ログを、誰もが見やすく・比較しやすく整理された形で提供できる仕組みが必要です。
授業支援・学生支援・教育改善など、目的に応じて使えるデータを整備することで、教職員はそれぞれの立場から学修状況を把握しやすくなり、タイムリーな対応や対話のきっかけを得ることができます。
そのためには、現場にとって「扱いやすい」「負担なく使える」仕組みであることが重要です。
たとえば「CampusLA」では、以下のような情報を自動で収集・統合・可視化することが可能です。
・学生ごとの資料閲覧回数、学習時間、テストにかかった時間
・授業回ごとのテストの成績、レポートの評定
LAシステムの導入は、単なるデータ分析ツールではなく、教育活動を支える“基盤”のひとつとして捉えることができます。
終わりに:一人ひとりの学びに向き合うために
LAは、教育の「成果」だけでなく「過程」にも目を向けることを可能にします。
これまで教員や支援スタッフが経験的に行ってきた学生理解に、データという新たな視点が加わることで、より丁寧な学修支援や授業改善が期待できます。
特別な仕組みではなく、「学びに寄り添うための身近な道具」として。LAが日々の教育活動の中で自然に活用されていくことが、学生にとっても教職員にとっても大きな支えとなるでしょう。